Editor’s Take — この週、何を読み解くか
今週のマーケットと規制当局の動きを俯瞰すると、「形式から実質へ」という共通テーマが三極(日本・米国・英国)で同時進行している。日本では金融庁が2026年6月のCGコード第三次改訂に向け本格議論に入り、東証PBR改革はフェーズ1(開示93%達成)からフェーズ2(実行と投資家対話の深化)へ移行しつつある。英国ではFRCのStewardship Code 2026が発効し、スチュワードシップ定義から「環境・社会・経済への便益」への言及が中核から外れた点は、欧州との思想的分岐を象徴する。
一方、米国ではデラウェア最高裁のSB21合憲判決(2026年2月27日)により、支配株主取引ストラクチャリングの予見可能性が大幅に向上した。日本のクロスシェアホールディング解消や親子上場整理の文脈でも、デラウェアの特別委員会ガバナンスの設計思想を参照する実務が増えると見る。
アクティビズム面では、日本市場が2025年に56キャンペーンで過去最高を記録し、2026年はElliottのToyota Industries案件を含む非日系ファンドのさらなる攻勢が予想される。防衛側アドバイザリーの重点は「資本政策の説得力」と「独立社外取締役のエンゲージメント・スキル」に移行している。
PE(プライベートエクイティ)では、Bain PE Report 2026が示す「12 is the new 5」—すなわちEBITDA成長の必要閾値が5%から12%へ倍増した構造変化が、PE側のガバナンス要求レベルを一段引き上げている。GP-led Secondaries・継続ビークル($226B、前年比+41%)の定着で「第4の出口」が標準化し、Take-private案件の増加(日本でもBain Capital・Carlyle・EQT・KKRが同時拡大フェーズに)は上場ガバナンスと非上場ガバナンスの接続領域を拡張している。SECのForm PF改訂準拠日は2026年10月に再延期されたが、LPのDD要件は既にESGを「運営規律」として組み込む方向へ深化している点は、アドバイザリー実務でも注視したい。
- 今週のアクションアイテム:(1)FRC UK Stewardship Code 2026のガイダンスを邦銀・生保のクライアント向けに整理し、4月30日の申請締切に向けたポジショニングを議論。
- (2)金融庁CGコード改訂の方向性(Action Program 2025)をクライアント取締役会でのプレゼン資料に落とし込む。
- (3)デラウェアSB21判決を踏まえ、日本の親子上場整理案件で「特別委員会設計」のベンチマークを再考。
- (4)ISS/Glass Lewis 2026年版方針(P4P評価5年期間化、時間ベース株式への柔軟化)を報酬委員会アドバイスに反映。
- (5)PE買収候補の日本企業クライアントにはBain「12 is the new 5」を共有し、取締役会の価値創造ナラティブとKPIを再点検。GP-led Secondaries・CV隆盛を踏まえ、エグジット選択肢マップをアップデート。